日時: | 2009 年 3 月 11 日(水) 13:30-14:30 |
場所: |
自然科学総合研究棟 3 号館 506 号室奥のセミナー室, |
講演者: | 広谷幸一氏(清華大学) |
世話人: | 相川祐理 |
タイトル: | パルサー:粒子加速理論のすばらしい実験室 |
abstract: |
近年打ち上げられた二つのガンマ線観測衛星AGILEとFermiを用いた観測により、回転駆動型パルサーからの高エネルギー電磁輻射の理論は、現在急速な発展期を迎えつつある。これまで、ガンマ線パルサーからの輻射は、大きく分けて二つのモデルよって説明されてきた:Slot-gap
(SG)モデルとOuter-gap(OG)モデルである。前者は、電波パルサーの観測を説明するpolar-capモデルを、中性子星表面から(星半径の数十倍から数百倍)遠くまで拡張したものである。一方、後者は、プラズマ対生成を定常的に維持する理論の一部として前者とは独立に発展してきた。本講演では、電子・陽電子対プラズマが従う基本方程式系を初めて自己無矛盾的に解くことにより、以下を示す: (1)SGは、基本方程式系の解としては存在しない。非物理的な仮定を人工的に導入した場合にのみ、かろうじて解として得られる。 (2)かろうじて得られたSGの解は、ガンマ線の観測光度の一割も説明する事ができない。 (3)OGは、自然な境界条件の下で基本方程式系の解として得られ、観測事実を定量的に説明する事ができる。4つのパラメーター(中性子星の回転周期,その時間変化率,星表面の温度,磁化軸と回転軸のなす角度)を与えるだけで、任意のパルサーについて解を求め、赤外−ガンマ線輻射の性質(エネルギー毎のパルス形状、パルス位相毎のスペクトル、各装置で観測できる可能性など)を説明・予言することができる。 |