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場の空気や流れを読むことは、世渡りに必要な能力の一つである。それと同様
に、 空を眺めて天気を予想する「観天望気」は、情報化社会の現代でも身を守
る上で必要不可欠 である。そもそも「観天望気」とは、漁師にとって一番怖い
風波を予測するためのものであった。しかし、風を直接見ることはできないの
で、目以 外の五感を使ったり、あるいは大気の流れを可視化してくれる雲を見
て、風波を予想したと言われている。このように、かつて風は、感 じるもので
あって見るものでは無かった。気象用ドップラーレーダでは、散 乱体として雨
粒や雪粒子などの比較的大きな粒子(〜mm)を利用して気流の測定を行い、雲内
の雨や雪および風の3次元分布観測を行っている。ドップラーレーダは、豪雨や
豪雪に対しては確かに威 力のある観測装置であるが、降雨・降雪の無い領域で
の大気の流れは測定で きない。そのため、晴天中の乱流はもちろん、高層雲、
高積雲や晴天積雲のような降水を伴わない雲がどのような気流場で形成されてい
るのかについても、実はほとんど理解が進んでい ない。そこで我々は、最近開
発され た、レーザー光を使って空気の動き(つまり風)を3次元的に観ることが
できる装置を使って、地上から対流圏の中層(およそ5km)までの、通常ではと
らえることのできない波や乱流構造を3次元的に観測し、乱流、エアロゾル、雲
の発生までをシームレスに研究している。本セミナーでは、本装置を用いた観測
によって、これまで観ることができなかった風の構造、あるい は、これまで予
想もしていなかった新たな風の構造について紹介する。
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