セミナー: | WTK/CPSセミナー |
日時: | 2017年1月24日(火)15:00- |
場所: | 惑星科学研究センター |
講演者: | 大島 慶一郎 (北海道大学低温科学研究所 教授) |
タイトル: | グローバルな視点で見た海氷生成と中深層水形成 |
要旨: |
深層まで及ぶ海洋の大循環(深層循環:熱塩循環)は、極域の海で重い水が沈み込み全海洋の深層に拡がりながら徐々に湧き上がることで作られる。重い水は、沿岸ポリニヤという海氷生産が非常に高い海域で排出される多量の低温高塩分水(ブライン)が、主要な起源となっている。従って、海氷生産量は熱塩循環における重要なファクターになる。我々は、人工衛星データと熱収支計算を駆使することで、海氷生産量を見積もるアルゴリズムを開発し、世界に先駆けて海氷生産量のグローバルマッピングを行ってきた。その結果、南大洋は、沿岸ポリニヤでの海氷生産が非常に高い海域であることがわかり、全海洋の深層に拡がる南極底層水がここで形成されることを説明する。陸に囲まれていない南大洋は沿岸域で海氷が発散場になりポリニヤが出現しやすいことによるもので、周りを陸に囲まれた北極海とは対照的になっている。海氷生産量マッピングからは,南極昭和基地の東方1,200km のケープダンレーポリニヤが南大洋で第2位の生産量を持つ高海氷生産海域であることが明らかとなり、未知(第4)の南極底層水生成域であることが示唆された。さらに日本のIPY観測によってそれを実証することにも成功した。一方、第3の南極底層水生成域であるメルツ氷河の沖では、2010年の氷河崩壊により、海氷生産量が40%程度減少し、それに伴ってここの南極底層水の生成が激減したことも示された。北太平洋では、一番重い水はオホーツク海のポリニヤでの高海氷生産によって生成され、北太平洋中層に及ぶ熱塩循環が作られる。以上のように、海氷生成は中深層水形成とその変動まで含めて強くリンクしていることが明らかとなってきた。現在、海氷生成と中深層水形成に関しては、以下の点に注目して研究を進めつつある。 1) 沿岸ポリニヤで効率的に海氷生成が生じるプロセス 2) 海氷生成による未知の深層水形成域(日本海北部?ベーリング海アナディール湾?) 3) 棚氷・氷河変動との関係 4) 物質循環・生物生産へのインパクト 5) 衛星海氷生産アルゴリズムの改良 6) 海氷生成・融解による熱塩フラックスデータの作成 |
キーワード: | 熱塩循環、海氷生産量、南極底層水、沿岸ポリニヤ |
世話人: | 岩山 隆寛 |