要旨: |
1980年代中頃からジャイアントインパクトモデルは月の起源のモデルの定説になっていたが、最近、月の化学組成についてこのモデルと矛盾するような観測事実(測定結果)が発表された。その一つは月には地球と同程度か地球よりわずかだけ少ない水があるという側定結果である。もう一つは、不揮発性元素(たとえばTi)の同位体比が地球のそれに非常に似ているという測定結果である。この二つを従来のジャイアントインパクトモデルで説明するのは難しい。まず、ジャイアントインパクトモデルでは、高温のガスが形成され、ガスから凝縮した物質から月ができたことになる。ガスから凝縮するときに水(水素)ばどの多くの揮発性物質が逃げてしまうであろう。また、ジャイアントインパクトの数値シミュレーションをすると、ほとんどの場合、高温のガスになりやがて月になる物質の多くがインパクターから来ていることになる。そこで、これらの化学組成に関する最近の研究結果はジャイアントインパクトモデルにとって大きな問題となる。 この講演では、これらの問題をどう解決していくかについての議論をする。解決の鍵は相図や状態方程式といった物質の基本的な性質を月形成モデルに取り入れていくことにあると思われる。
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