惑星探査,大量のデータ解析・アーカイブ作成,大規模数値シミュレー ションなど,惑星科学研究においても巨額の費用と莫大な人的コストを 要する時代となっている.また,そうした巨大科学となった惑星科学研 究は,必ずしも国内の科学者が持つ科学的興味のみに基づいて生まれる わけではなく,世界各国の宇宙開発機関の動向や,それらに起因する政 治的な要請に基づいて生まれることもあり,それらに対してコミュニテ ィがどのように対応するべきなのか,難しい舵取りを迫られることもあ る.
これまでに日本で行われてきた惑星科学研究は,主に全国の大学・研究 機関に所属する研究者が独自の発想に基づいて独立して研究を行ってき た. このような個々の研究者が独立して活動する研究のスタイルは科学 の原点であり,相応の利点を持っているだろう. しかし一方で,コミュ ニティ内で探査計画が立ち上がっても,その計画に直接関わらない研究 者の関心を必ずしも引き出すことができず,コミュニティ内の計画とし て十分な議論が行われていなかった点は否めない.国内の惑星科学研究 者層が決して厚くないことを考えると,その力を結集し個々の力を組織 的に結び付けていかない限り,惑星探査のような大規模プロジェクトを 実施していくことはとても不可能である.
このような問題意識に基づき,本集会では,より強いコミュニティの形 を模索する足掛かりとするべく,まずは国内で惑星科学研究の「インフ ラ」を提供する複数の研究機関が目指すものとそれらの惑星コミュニティ における位置付けを把握・整理し,今後のあるべき形について議論した い.
高橋芳幸, 小林直樹, 和田浩二, 千秋博紀, 鈴木絢子, 倉本圭, 渡邊誠一郎