日時: | 2011 年 1 月 19 日(水) 14:00- |
場所: |
神戸大学自然科学総合研究棟 4 号館 809 号室 |
講演者: | 小布施 祈織 (京都大学) |
世話人: | 高橋 芳幸 |
タイトル: | ウッズホール海洋研究所GFDプログラム2010 |
abstract: |
ウッズホール海洋研究所における2010年夏のGFDプログラムの報告をする. プロジェクトでは、2次元流体内に置かれた半無限平面壁付近に存在する微小生物の描く軌道についての考察を行った. このテーマは,バクテリアのような微小生物が壁付近に存在するときに, 壁に引き寄せられるように移動したり, 円のような軌道を描いて動いたり,幾つかの個体がクラスターを作って回転したり, 壁に沿った軌道を描きながら周期的にジャンプしたり, といった興味深い挙動を示すという実際の観測事実によって動機づけられているものである. 上記の微小生物のもたらす流れはStokes 方程式に従い, その流れの流れ関数および微小生物の軌道の時間発展方程式は, 複素解析を用いることによって解析的に得ることができる. 複素平面におけるStokes 方程式の流れ関数は一般に2つの解析関数で与えられ, 微小生物はそれらの関数が持つ孤立特異点として表現される. そこに壁面に映った微小生物の像を表現する項を付加し, 境界条件を課すことによって, 2つの解析関数は具体的に決定される. 得られた微小生物の軌道の時間発展方程式を異なる初期条件に対して数値的に計算し, 様々な軌道を得た. その結果, 微小生物の示す挙動は初期条件からは単純に推測することはできず, 特に初期位置が壁の端点から充分に遠い壁上部にある場合には非常に複雑になることが確認された. また, 微小生物が壁から逃げることができる確率を各初期位置について計算すると, 壁から充分に離れた初期位置を持つ場合にも, その確率は100%にはならないことが確認された.このことはすなわち, 壁から充分に離れた初期位置を持つ場合においても, 微小生物は壁の存在, つまり壁上に映る自分自身の像の存在を認識しており, その影響を受けるということを示唆している. その他, 集中講義や生活についても簡単に報告する予定である. |