要旨: |
太陽系の形成と進化を知る上で、微惑星の生き残りである小惑星の性質を明らかにすることは重要である。小惑星のもっとも基本的な物理量に天体サイズとアルベドがある。多くの小惑星に対して短期間で効率的にサイズを測定するには、宇宙望遠鏡を用いた熱赤外線観測が有効である。
我々は2006年2月に打ち上げられた赤外線天文衛星「あかり」の全天サーベイデータを用いて、小惑星5120個のサイズ・アルベドを決定し、カタログ化した。このカタログ(Asteroid Catalog Using AKARI;AcuA)は、「あかり」の1年半連続した観測に基づくことで、2au以遠の小惑星帯で観測領域に抜けがなく、小惑星帯の総質量の98%以上を占める20km以上の天体をすべて網羅できている。観測バイアスに左右さない実測値が得られるこのカタログは、今後の小惑星研究の基礎をなすものである。
「あかり」は、全天サーベイ観測だけでなく、撮像や分光のための指向観測も行ったが、特に近・中間赤外線カメラIRCによる波長2-5micronの分光観測は、地球大気の影響を受けず連続的に良質なスペクトルを取得できる点で「あかり」のユニークな点の1つである。我々は、この機能を用いて小惑星70個について分光サーベイ観測を行った。この観測から、多くのC型小惑星において含水鉱物由来の吸収フィーチャーをはじめて明確に捉えることに成功した。
本講演では、「あかり」による小惑星の中間赤外線サーベイの概要とそこから得られるメインベルト小惑星の物質分布について議論する。さらに「あかり」の近赤外線分光観測による小惑星の含水鉱物探査について紹介する。
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