・ 修士課程特別講義 「惑星地質学」 ・ 惑星物質科学特別セミナー ・ セミナー「吸い込み渦の構造と不安定」 2月3日に以下のようなセミナーを企画しています.よろしくご参集ください. 日時: 2004年02月3日(火) 13:30〜15:00 場所: セミナー室 タイトル:吸い込み渦の構造と不安定 演者:野口尚史(東京大学海洋研究所) 要旨: 水槽の底に穴をあけると、角運動量保存の結果として強い渦ができることは 良く知られている。このような「吸い込み渦」の速度分布は Rankine 渦で よく近似されると考えられている。つまり、半径 R までの渦核は剛体回転 し、その外側ではポテンシャル渦になっているというのである。しかしなが ら現実の吸い込み渦には中心に向かう流れがあり、しかも底面には回転境界 層が生じるため渦の構造は異なってくるであろう。 この研究では鉛直軸まわりに回転する円筒水槽の内部に吸い込み渦を作り、 PIVによる流速場の測定と染料による可視化とで渦の構造を調べた。実験で 変化させたパラメータは水槽の回転数と、水槽底面中心の穴から吸い出す水 の流量の2つである。定常状態では、流量の多いときには Rankine 渦に近 い渦ができたが、流量の少ないときには渦核の外側で 1/r の速度分布が実 現しなかった。定常状態で円筒の側壁から注入した染料は、側面に沿って下 降したのち、底面の境界層を通って中心に流れ込むがすぐに穴から流出せず、 渦核に沿って上昇することが見られた。 非線形のエクマン・パンピングのパラメタリゼーションを用いた簡単な理論 モデルをたて、吸い込み渦と底面の回転境界層との相互作用を調べた。室内 実験で見られた渦核外側の領域の速度分布と吸い込み流量との関係を説明で きることが分かった。 吸い込み渦に関するもう一つの興味は、渦核の外側のポテンシャル渦の領域 が慣性中立であり、少しの回転速度分布のずれがただちに慣性不安定を起こ すと予想されることである。水槽の回転速度を急に減少させた結果、側壁で は慣性不安定による多数の水平なプルームが現れ、混合層が形成された。一 方、底面では同心円状の構造が表れ、染料は内部領域へと侵入するのが見ら れた。