第 3 回 CPS 衝突実験実習 テーマB

高速度での堆積岩へのクレーター形成実験

実験結果


本実験結果と先行研究結果

表2:測定結果
弾丸の種類 衝突速度(km/s) マイクロスコープを用いたクレーター体積(cm3) クレーター深さ(mm) 横方向クレーター径(mm) 縦方向クレーター径(mm) 円錐仮定のクレーター体積(cm3) 標的密度(g/cm3)
ナイロンvs砂岩 6.875 0.126025 12.067 9.3530 9.4980 0.2806409 2.5
WCvs砂岩 2.047 0.642861 17.299 9.1570 10.714 0.4443185 2.5
アルミナvs砂岩 3.779 0.607882 12.355 11.688 10.814 0.4088254 2.5
ガラスvs砂岩 4.794 0.127166 12.054 9.1950 10.068 0.2921425 2.5
ナイロンφ3mm vs砂岩 6.814 0.655677 15.140 28.745 30.614 3.4880033 2.5
チタンvs砂岩 3.046 0.163415 12.226 11.299 9.8360 0.3557226 2.5
表3:先行実験実習の結果(比較のため)
弾丸の種類 弾丸径φ(mm) 質量(mg) 密度(g/cm3) 衝突速度(km/s) クレーター体積(cm3) 標的密度(g/cm3)
ナイロンvs砂岩 7 219.157 1.22029 3.90 9.3675 2.6
ナイロンvs泥岩 7 219.157 1.22029 4.37 31.854 3.1
ナイロンvs大理石 7 219.157 1.22029 3.85 7.7387 2.7
ナイロンvs中国砂岩 7 219.157 1.22029 4.21 3.9658 2.2
ナイロンvs大理石 7 219.157 1.22029 4.20 17.796 2.7
ナイロンvs砂岩 7 219.157 1.22029 4.20 1.4900 2.6
ナイロンvs大理石 7 219.157 1.22029 2.31 4.2557 2.7
ナイロンvs泥岩 7 219.157 1.22029 1.91 1.6395 3.1
ナイロンvs中国砂岩 7 219.157 1.22029 2.22 6.1528 2.2
ナイロンvs砂岩 7 219.157 1.22029 3.90 7.7213 2.6
ナイロンvs中国砂岩 7 219.157 1.22029 3.96 11.155 2.2
ポリカーボネートvs砂岩 14.8 4335.247 1.26 0.8197 11.274 2.5
ポリカーボネートvs砂岩 14.8 4335.247 1.26 1.035 67.540 2.5
ポリカーボネートvs砂岩 14.8 4335.247 1.26 0.832 13.385 2.5
ポリカーボネートvs砂岩 14.8 4335.247 1.26 0.996 18.143 2.5

スケーリング則の式を下記に示す。
2010年の衝突実験実習(基礎編)では、π4(=ρt/ρp)を一定とすることでπ1とπ3の関係からAとαを求めることができた。
今回の実験ではπ3を一定にすることにより、π1とπ4の関係からAとβを求める。そして求めたβから、これまで行ってきた一連の実験のデータを組み合わせることでαを求め比較する。
第1段階:今回の計測データの値を用い、αβを求める。
第2段階:全データを用いαを求め、第1段階で求めたαβを用いβを求める。

解析結果

図9:第1段階


第1段階よりαが求まる。

αβ=-0.2917

次に第2段階の計算

図10:第2段階

第2段階の結果と第1段階で求まったαよりβとAが求まる。

α=-0.553 , β=-0.527 , A=0.969


考察

(1) 金属を使ったスケーリング則との比較

先行研究より金属スケーリング則の値は求まっている。

図11:Holsapple_and_Schmidt(1982)

グラフより、

α=-0.709 , β=-0.738 , A=0.458

この値と今回求めたαβを比較すると

αβ_[金属]=0.523 > αβ_[堆積岩]=0.291

グラフにしたのが下図になる。

図12:金属スケーリング則との比較

これから言えることは、
→堆積岩の方がターゲットと弾丸の密度比の変化によるクレーターの大きさの変化が小さい。
→今回の実験で求めたαβを使うことで、実際に惑星表面で隕石が衝突した場合の隕石と衝突地点の 密度比の推測の誤差を小さくすることができる。

同様にαを比較すると

α_[金属]=-0.709 < α_[堆積岩]=-0.553

グラフにしたのが下図になる

図13:金属スケーリング則との比較2

これから言えることは、
→堆積岩の方がターゲットと弾丸のπ3の変化によるクレーターの大きさの変化が小さい。
→今回の実験で求めたαを使うことで実際に惑星表面に隕石が衝突した場合のπ3の推測の誤差を 小さくすることができる。

(2) 体積に関する考察


上表によると顕微鏡と楕円錐近似の体積測定の違いは、SUSの場合顕著になる。これは、SUSによるクレーターのスポレーションが不完全であったことが原因とされる。そこで、SUSの体積のみをスポレーションしていない径で同じ評価をすると、

図14:体積補正した第1段階

グラフより、体積補正することで図9に比べそれぞれの値がラインに並ぶのが分かる。これより求めたαβは、

αβ=0.5241

全データよりαを求めると

図15:体積補正した第2段階

グラフより、

α=-0.616 , β=−0.851 , A=0.571

これを金属スケーリングと比較すると、

α_[金属]=-0.709 < α_[堆積岩]=-0.616

β_[金属]=-0.738 > β_[堆積岩]=-0.851

αβ_[金属]=0.523 = αβ_[堆積岩]=0.524

堆積岩と金属を比較してみると、αβほぼ同じ値だがαが異なるためβも金属と堆積岩で値が異なる。 このことから、スケーリング則を下記の表記にすることを提案する。そうすることでターゲットが金属であっても堆積岩であってもπ4の乗数を同じとすることができる。

今後の課題

図16:クレーターの違い

上図から分かるように、今回行なった実験においてSUSによるクレーターのスポレーションは2shotともに不完全なものとなった。また、WCに関しては弾丸による掘削が見られた。これらの違いは弾丸の強度にある。そこで、弾丸の強度順にクレーターを並べたのが下図である。

図17:弾丸強度とクレーターの違い

まとめると、次のようになる。
ナイロン→スポレーションを起こさない
SUS→スポレーション起こしかけ
WC→弾丸による掘削
これらの違いは、スケーリング則に弾丸強度が関係を示唆している。 すなわち、

上式のように、弾丸強度の項をスケーリング則に組み込む必要がある。

Last modified: 11.01.12
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