第 3 回 CPS 衝突実験実習 テーマC

衝撃波の可視化実験

テーマ1の実験結果と考察

衝撃波速度と圧力

 撮影した画像から衝撃波速度を読み取り、衝撃波面の到達距離を横軸にとってプロットしたのが図1である。 さらに、ユゴニオの式に得られた衝撃波速度を代入して衝撃波圧力を求め、それを縦軸にとって同様にプロットしたものが図2である。

図1:それぞれのターゲットにおける衝撃波の速度と到達距離をプロットしたグラフ。

図2:それぞれのターゲットにおける衝撃波の圧力と到達距離をプロットしたグラフ。

 図2から、ガラスには距離による圧力の減衰傾向が見られたが、アクリルのターゲットには見られないことが分かる。これは、音速に近い衝撃波速度では減速率は小さいからではないかと考えられる。

破片質量と積算個数

 4mm以上の大きな破片については個々に質量を測定した(図1)。
 4mm以下の小さな破片については、あるふるい目に残った破片の質量をはかり、これと破片1つの質量から個数を求めた。なお、破片の体積は、1つ大きなふるい目との平均の目を直径とする球で近似し、これに密度をかけたものを破片1つの質量としている。

図1:4mm以上のサイズのガラスの破片

 すべてのターゲットについてそれぞれ破片の質量と積算個数を求めたところ、図2のようになった。

図2:横軸は規格化した破片質量、縦軸はその質量以上の破片の積算個数。


 アクリルのグラフからは、
・サイズが小さいほど最大破片が小さい
・サイズが小さいほど破片数が多い
・サイズが小さいほど最大破片からの傾きが急になる
・破片質量の小さいところでは傾きはサイズによらない
などが分かる。
 また、アクリルとガラスのグラフを見比べると、破片質量の小さいところでガラスのほうが傾きが急になっている。 これはガラスよりもアクリルの方が延性があり、破壊によって得られる小破片が伸びてサイズが大きくなるためだと考えられる。

テーマ2の実験結果と考察


衝撃波下流を影写真法を用いて撮影したところ、図3のように衝撃波面が移動していく様子を見ることが出来た。

図3:衝撃波面が移動していく様子。時系列順に左上、右上、左下、右下と並んでいる。一コマ当たりの時間間隔は8μs、画像の横幅は約40mm。


これらの画像から衝撃波速度を読み取り、初期圧力比とともにプロットしたところ、図4のようになった。

図4:横軸は初期圧力比、縦軸は衝撃波マッハ数。高圧室側に真空を引いた場合と引かなかった場合の、それぞれの実験値と解析解を示した。

 初期圧力比が小さい場合は解析解とのずれは比較的小さいが、 初期圧力比が大きくなるほどずれは大きくなり、衝撃波マッハ数が小さくなる傾向が見られた。
 その原因として、真空を引いたり高圧のヘリウムガスを入れたりした時に、 両室の圧力差に負けてセロハン膜が伸びてたわんでしまったことが考えられる。 これによって衝撃波の波面が歪むなどして、速度が落ちてしまったのかもしれない。 また、針の刺さり具合やセロハン膜の割れ方にも影響するだろう。
 解決策としては、真空を引いたりしてもたわまず、なおかつ全体が一斉に割れるような膜 (例えば、金属製のダイヤフラムなど)を用いることが挙げられる。 また、低圧室側でも真空を引くことによって、両室の圧力差が比較的小さい状態で初期圧力比を大きくとることが出来る。 (ただしこの場合、衝撃波下流を開放したままには出来ないので、装置に何らかの工夫が必要である。)
Last modified: 11.01.12
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